遥か昔から巡り来る夏の夜空。
空にはたくさんの星が瞬いています。
その空の下には体が弱く家から出ることができない少女が住んでいました。
いつも夜になるとベッドから夜空を眺めています。
眩しく光る太陽よりも、優しく照らす星の方が好きだったのです。
その空に一つの星がいました。
名前はありません。
いつしかその星はいつも夜空を眺める少女に恋をしてしまいました。
でも少女はあまりにもたくさんの星があるのでその星の事に気がつきません。
星は少女に見て欲しくて毎日精一杯光を放っていました。
空が曇っている時は少女は悲しそうな顔をします。
だからその星は晴れた日には曇っていた時の分もがんばって輝きました。
夏の間しかその空にいられない星は、幾千もの星たちの中で自分を一目見て欲しくて光り続けました。
ある日少女がその星を見つけました。
どの星よりもひときわ輝くその星を見て、少女は少し元気になりました。
それから少女は毎晩窓際のベッドでその星を探すようになりました。
少女は辛い事があるとその星に向かって打ち明けました。
星はその度に強く輝いて少女を励ましました。
やっと少女に見てもらえるようになったその頃、夏の神様が季節の終わりを告げようとしていました。
夏が終わるとそろそろ秋の星たちがやってきます。
秋の星たちが来てしまったら夏の星たちは次の空へ行かなければなりません。
日に日に向こうの空へ行ってしまう星を見て少女は寂しくなりました。
そんな悲しそうな少女を見て星は夏の神様にお願いをする事にしました。
「神様、どうか僕をあの空にずっといさせてください」
夏の神様は言いました。
「それはできません、あなた達は夏の夜空を色んな人たちに見せて回るのが仕事なのです」
それでも星は引き下がりません。
「お願いします。僕はあの少女に希望を与えたいのです」
少女に恋した星の気持ちに心打たれた夏の神様は、他の季節の神様と相談しました。
夏の神様はこう言います。
「いいでしょう。あなたをずっとあの空にいさせてあげましょう」
しかし夏の神様は一つだけ条件を出しました。
それは少女だけでなく、夜空を見上げる全ての人たちに平等に光を照らしてあげることだったのです。
それでも星は大喜びで引き受けました。
それからというもの、その星はどんな季節でも同じ空の上で輝いています。
みんなに希望を与えるために。
でもその少女には少しだけ多く光を照らしていますけど。
そしていつまでも北の夜空から見守ってくれているその星を下界の人々は
「ほっきょくせい」と名づけました。
夜空を見上げると一番強くそして優しく光輝いている星です。